2000 年4月11日
東京都労働経済局
日本鉛筆工業協同組合
東京都産のひのきと杉でつくった筆記具の試作出荷について
1. はじめに
   東京都労働経済局商工振興部工業振興課は、東京都の地場産業に指定している「鉛筆」の材料に、東京都の山林のひのきと杉を利用すべく日本鉛筆工業協同組合(所在地:荒川区西日暮里2-30-6)に呼びかけ、この度、これらの材料で作った試作品が完成されました。
2. 経緯
   東京都労働経済局商工振興部工業振興課と同農林水産部林務課は、鉛筆製造者団体の日本鉛筆工業協同組合、並びに林業団体の東京都森林組合連合会(専務理事:青柳幹夫 所在地:東京都あきる野市館谷223-10 電話042-596-2344)、及び檜原村森林組合(代表理事:小林久夫 所在地:東京都西多摩郡檜原村609-2 電話042-598-0023)と、東京都檜原村山林の森林資源を利用した鉛筆等の製造に関する検討会を昨年夏からもってきました。
   連合会と森林組合の基本的な姿勢は、地域の再生可能資源を地域の中で積極的に活用し、還元することにより、林業ひいては日本の森林を守ると同時に、21世紀の新たなライフスタイルを提案する「森のゼロエミッション構想」に基づくものです。
   鉛筆組合は、鉛筆の木軸材料は歴史的にも余った資源(建材や家具に適さない樹種や形状のもの)を積極的に利用してきた経緯があり、東京都の森林で産した森林資源の利用の可能性を積極的に検討してきました。
   昨年12月、檜原村森林組合から鉛筆木軸材料用に加工されたひのきと杉材、合計1.2立方mの角材が鉛筆組合に搬入され、これを鉛筆組合会員の木軸加工会社で再加工する中で、檜原村のひのきと杉が、通常、鉛筆に利用している北米産のインセンスシダー(ひのき科/和名・かおり杉)に比べて耐久性、使用感、品質観共に格段に優れていること、また豊かな木の香りを含んでいること等から、鉛筆の木軸として試作すると共に、同じく鉛筆木軸加工工程でつくることのできる木のシャープペン軸や木のボールペン軸に転用・使用できることに気付き、試作を製作しました。
   この度、上記角材で試作した筆記具は、鉛筆3万本(約210グロス)、0.5ミリ芯ノック式シャープペンシル2千本、油性ノック式ボールペン2千本です。
同試作品は、財団法人東京都農林水産振興財団のご協力で
(1) 都の援農ボランティア(資料イ)協力者への粗品として鉛筆2本とボールペン1本のセット
(2) 東京緑化推進委員会が実施する「緑の募金」(資料ロ)の協力者への粗品として鉛筆2本のセット
(3) 「都民の森10周年記念事業」(資料ハ)の記念品としてシャープペンシル1本とボールペン1本のセットが採用されることがこの程決定しました。
3. 今後の課題
   鉛筆組合と森林組合は、この試作品の反応を見て、今後、一般販売品の木軸材料として供給する態勢について検討を重ねていきます。また鉛筆組合は同じ課題をかかえる道府県との協議も行っていく用意があります。その具体的イメージとしては、
(a) 組合が各地の森林組合等を通して一定規準を満たした木軸材料(角材)を買い上げる、
(b) これを鉛筆資材用(スラット)に加工し、これを組合加盟各社に原料として販売する、
(c) 鉛筆製造業者は各社独自の営業ルートで、デザインや愛称等の工夫してこれを販売する、というものです。
※東京都広報室を経由して都庁記者クラブで発表された資料です。
<資料>
資料イ:「東京都援農システム推進事業」について

   東京の農業は、担い手の不足と高齢化の進行及び営農環境の悪化から農業者の自助努力だけでは、優良な農地を保全し、担い手を確保することは困難である。さらに、生産緑地等において農業を継続して行うためには、計画的かつ永続的な担い手の確保・育成が極めて重要となっている。
   そこで、東京都では平成6年に策定した「東京農業振興プラン」に基づき、農外から広範な都民の参加・協力を得て農業者と農業に関心を持つ都市住民との交流を促進し、「ふれあい援農ボランティア」として養成し、農協等を通じ、農家の要請に応じて援農ボランティアを派遣する「援農ボランティア支援事業」を実施している。
   この事業は、平成7年度から3年間国分寺市と八王子市でモデル事業を実施し、その成果を基に平成10年度から事業実施地区を拡大し、現在7地域(杉並区、八王子市、府中市、小平市、調布市、東大和市、国分寺市)で本格的に実施している。
   事業実施区域全体で現在、427名の援農ボランティアを登録し、グループ化して85戸の農家に派遣している。
資料ロ:「緑の募金」について(東京都のことしの春の募金は3月1日から5月31日まで)
   「緑の募金による森林整備等の推進に関する法律」(通称「緑の募金法」)が95年4月27日の衆院本会議で全会一致で可決成立した。施行は同年6月1日。
   これまで任意で展開されていた「緑の羽根」募金の基本精神を維持しながら、この法制化によって、法律に基づく募金活動に強化、都道府県を主体に全国的に「緑の募金」が展開される。「緑の羽根」募金は全国で約13億円規模だったが、法制化によって100億円台(全国)に乗せることが当初の目標とされている。また、寄付金の使途も森林整備、緑化の推進、国際緑化の推進等と拡大された。

   都道府県は春と秋の年2回、募金目標を設定し、事業計画をたて募金の結果並びに寄付金の使途を公表することになっている。募金の方法は1.街頭募金2.家庭募金(町内会等を通じた活動)3.企業募金4.職場募金.5.学校募金(PTA等を通じた活動)が柱。活動時期は都道府県の判断で「春、秋」の訪れとともに設定される。東京都の平成12年の春の募金は3月1日から5月31日まで。
資料ハ:「都民の森10周年記念事業」について
   東京都檜原都民の森は、三頭山山腹の檜原村数馬地区に平成2年5月31日開園し、平成12年5月に開園10周年を迎える。檜原都民の森は、毎年約25万人が訪れる施設であり、今後「三頭大滝」が東京都指定文化財(名勝)に、「ブナの森」が自然公園法による特別保護地区に指定される予定である。

   近年、環境問題への関心が国民的規模で高まり、特に都市住民の森林への期待は高まってきている。このような機会をとらえ、森林や木材に直接触れることにより、森林を身近で大切な財産として認識してもらうため、来園者向イベントを主体とした檜原都民の森10周年記念事業を実施する。

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